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五井野正博士の世界

『雨中の大橋』の中の日本文字の解読I

ゴッホは娼婦と7月13日に結婚していた!!

ゴッホの死の宣告“13日付けの金曜日の手紙”が届いた

 13本の向日葵の13という数字がゴッホの代用数字であった事を、ゴッホ作『花咲く梅の木』の画中の短冊に作者名を表す「十三の大錦」という言葉を判読した事から説明してきた。
 しかし、キリスト教社会で“不吉”を暗示する13という数字を伝道師でもあったゴッホが何故あえて用いたのか!?とゴッホファンだったら当然気になるところだろう。
 そこで、1882年7月13日にゴッホが弟テオにシーンとの内々的な結婚宣言を記述したその日を、ゴッホ作『雨中の大橋』の黄色い色紙の中に713?14という数字で書き表したとしても、その13という数字を何故ゴッホが自らの代用数字にして表したかである。
 14でも良かった訳である。
 実はゴッホにとって、なんと13日の金曜日が暗示する刑死宣告を、最も愛するケイと弟テオから受けた事が過去にあったのである。
 それはゴッホがハーグでシーンと知り合って婚約まで交わした1882年5月に、テオから13日の日付で刑死宣告を意味してしまうような返事の手紙がゴッホに来てしまったという出来事だった。 しかも、その5月13日は丁度金曜日だったのである。 「13日の金曜日」、それはキリストの刑死の日と偶然に重なり合った。

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 事の次第は、5月14日ゴッホがテオに次のような記述をした長い手紙を出したことから始まった。
「僕は君の忠告にたてつく場合でも自分の首をかけている。でもテオ、他にどうすればいいのか分からない。僕の首をはねる必要があるならば、ほら、この通り、首を差し出す。…(中略)もし君の手紙に対し、“わかった、テオ、君の言うことが正しい。僕はクリスティン(シーン)を捨てよう”と返事を出したとする。そしたら僕はまず君と仲良くする為に嘘をつき、次にどうしようもなくイヤな事をしなければならない。だからといって、もし君に逆らった場合、君がH・G・T(テルステーフ)やM(モーヴ)と同じ行動にでるならば、これは僕の首にかかった問題になるだろう。ともかく、そうしなければならないと言うならお願いだから僕の頭をはねてくれ」
と記したのである。
そして、同じ手紙の中でゴッホがアムステルダムでケイに拒否されただけでなく、ケイの家族に侮辱された事を述べ、それゆえ徐々に愛情が枯死してしまったが、クリスティンに出会って再び愛情が蘇った事を二度も記している。
「アムステルダムから戻ってくると、僕は今まであんなに真実で正直で、しかも強かった愛情が抹殺されてしまっていたのを感じた。しかし、死の後には復活がある。Resnrgam(再び生きなん)。
そして僕はクリスティン(シーン)に出会ったのだ。躊躇したり、日を延ばす余裕はなかった。僕は行動に移さなければならなかった。もし、彼女と結婚できないなら、僕は彼女をそのまま一人にして置いた方が親切だったろう」
ゴッホはケイによって愛情が殺され、シーンによって復活したと記しているのである。


13階段の上はシーンとの結婚

 さらにゴッホはテオへの14日付けの手紙の最後に、次のように結論づけて記述する。
「貴方が私に宣告するように私は有罪であり抗議などしません。貴方の提供したお金に対し、私は作品で返します。しかし、それで十分でないとおっしゃるのであれば、他にお返しするものがないので私は有罪となります…(中略)私は最悪の事態を覚悟していますので、少しでも憂慮を与えて欲しいとは望んでいません…(中略)今、僕は死刑宣告をされたのかどうかはわからない。イエスかノーか???もしイエスなら
“死に向かう人からよろしく”だ」
 と、投げかけた文章で終わらせ、死を覚悟してまでもシーンと結婚したいことを切実に訴えて、テオの返事を待ったのである。
 ところが、この手紙を朝方に出した後に、5月13日金曜日付けのテオからの手紙がゴッホに届いてしまう。 内容はシーンと一緒になることに反対の立場をとった記述となっていたのだ。
 つまり、ゴッホは弟テオから死刑宣告を受けたのと同じになってしまうのである。
 するとゴッホはテオに宣誓しただけに、なんと“13日の金曜日”の日付のテオからの手紙によって13階段の道を登らなければならなくなった。
 しかし、ゴッホは14日の朝に出した深刻な手紙をテオがまだ時間的にゴッホの14日付けの手紙を読んでいないと考えた。
 そこで早急に、テオに長文の手紙を書いて送るのである。
「5月13日付けの君の手紙を受け取ったが、僕の手紙と行き違いになったと思うので、早急にいくつかの点について君に説明する必要がある」 と、先ずゴッホは冒頭に記述する。
 そして、テオの手紙の内容について評論家の様に批評し、賞賛した後に慎重な言い回しでシーンとの出会い話をする。
 そして、あらゆる角度からゴッホはシーンを賞賛し、必要な人だと書きつづってゆく。
 そして、ゴッホがシーンにとった今までの行動は正当なものであると強調していくが、もはやゴッホは以前の手紙の様に威厳を持ってテオに主張を押し通す事は出来なかった。
 何故なら、シーンとの結婚問題に首をかけて、たんかを切った手紙を出した矢先に水を差す様な否定的なテオの手紙が来てしまった後だったからである。
 ゆえに、シーンと結婚出来るならテオの言うことは何でも聞くと、やがて懇願し始めるのだ。
「僕はクリスティンと向き合って婚約を交わしたことを守り通していくことに、もうわかってくれても良いだろう。もう一度言うが、ハーグに住むことが誰かの邪魔になるならば、遠慮無しで言ってくれ。住居などに関する全てのことを僕は喜んで(君の指示に)従う。アトリエ、居間、寝室は必要だが、場所はハーグでもどこでも良い。言うことを聞くから」
 と述べ、その代わりに資金援助は撤回しないでくれとテオに頼む。
 そして手紙の最後にゴッホはテオに次のように述べる。
「僕はどんなに危険な状況となっても、こう言うしかないのだ。
『僕とクリスティンはお互いに結婚を約束した。だから僕たちがその婚約を破ることはない』と。
 それにしてもこん畜生、一体どうしたことか。
 いつの時代に生きていると思っているんだ。目を覚ましてくれ、テオ。詭弁に圧倒されたり、影響を受けたりしてはだめなんだ。僕が身ごもりの女を助け、外に放り出したくないと言ったからといって、僕は君に見殺しにされなければいけないのか。僕たちはお互いに忠誠を誓い合ったのだ。それがいけないのか。本当にそれは死に値することなのか。それじゃあ、さようならだ。
 僕をぶんなぐったり、僕の首〈ついでにクリスティンと子供の首もだ〉を切り落とす前に、もう一晩寝てよく考えてくれ。
 繰り返すが、もしそうしなければならないならば、僕の首を取ってくれ。でもそうはなりたくない。素描するのに首は必要なのだから」
 と、文を締めくくるのである。
 そして追伸して、
「クリスティンと子供も首無しではポーズはとれない」
 と記述する。
 つまり、ここにゴッホの13の数字の秘密があったと考えられるのである。
 13階段の死刑を回避する方法は、その先の一段登った(+1)の14段目の結婚を認めてもらうしかゴッホの脳裏にはなかったことが、この書簡で明らかにされていたからである。
 この様なゴッホの手紙に対し、もはやテオはシーンとの結婚に反対できるはずがなかった。
 テオは折れたのである。


「+1は再生への方程式」

 5月14日のテオへの手紙は、ゴッホの良き協力者であったモーヴ(Mauve)からゴッホに対し、シーンと別れなければ「これで全部おしまいだ」と言われ、さらに手紙で「これから二ヶ月間は絶交だ」と言われたことのショックが原因となっていた。
 そして丁度二ヶ月後に、今度は親戚のテルステーフから酷い侮辱を受け、興奮してテオにシーンとの内々の結婚宣告をした手紙を7月13日に書き、14日に送ったのである。 将にゴッホにとって13日は死の宣告に値する日であり、14日はなおも生き続ける翌日の日として、すなわちゴッホにとって生きる道として、それはシーンとの結婚への日を意味していたのだ。
 それにしてもゴッホの運命に偶然が重なることがあまりにも多い。
 ゴッホが生まれた1853年3月30日は丁度一年前の1852年3月30日にゴッホの兄生まれたと同時に死んだ日でもあった。
 その兄の名も全くゴッホと同じ“フィンセント・ファン・ホッホ”であった。
 すなわち“フィンセント・ファン・ホッホ”の死は、1年後、全く同じ日に再び同姓同名の“フィンセント・ファン・ホッホ”の誕生となる。
 ゆえにゴッホは幼い時から、避けられない大きな運命的なものを常に感じていたであろう。
 すなわちゴッホの誕生からつきまとっていた運命とは、1852年(死)+1=1853年(生)という図式であり、それはゴッホの人生にとって常に大きな運命的思想となっていたはずである。
 すなわち「+1」はゴッホにとって、それは13という死から14という生への再生に連結する運命の方程式として、Resnrgam(再び生きなん)の意であったと考えられるのだ。


              
五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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