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五井野正博士の世界

原発による環境及び人的影響25

地震は止めることも起こすこともできる

国家あるいは国家防衛にとって重要な研究・開発は全て非公開

 と言ってもその様なボンクラを集めて対策を講じた菅前首相にも責任は免れないだろう。この様な経緯を考えると、福島原発の事故は地震だけでなく人災の部分もかなりあるという事になる。
 ところが、この地震も人災だという説を唱える人がいる。プレートの断層に核爆弾を仕掛けて地震を起こしたという説を述べる人もいれば、地震兵器を使って大地震を引き起こしたと説く人もいる。
 そんなことがあり得るのかと教科書の想定内勉強だけをして来た人はそう思うであろう。しかしながら全ての研究や開発が世の中に公開されている訳ではなく、国家にとって重要な研究、あるいは国家の防衛にとって重要な研究・開発は非公開であり、秘密ファイルにしてその内容の全てを”隠す“ということになる。原発も、もともとは原爆として”秘密“に開発された事は歴史が示す通りである。
 これは、今においても北朝鮮やイランなどが”隠し“の中で原爆開発を行なっていると考えることで理解できるであろう。そして、原発から放射性廃棄物としてプルトニウムが生み出されるが、ウランと違って少量でプルニウム原爆が製造される。長崎に落とされた原爆である。
 それゆえ、原爆を製造する一歩前の段階として原発の開発は軍事的に独立、もしくは大国を目指す国にとって政治的な目標として最優先の課題となる。もちろん、平和利用の顔として原発を開発するのだが”隠された顔“は軍事用の、つまり戦争用の顔で原爆開発を推し進めるのである。
 と言うのも、平和利用として原発で電力を生み出すには実際のところ水力、火力よりコストが高くなるだけでなく、放射線被爆や放射性物質の廃棄処理という二次的なリスクやコストが大きくかかることになる。それゆえ、産業的には不経済かつリスクの大きい危険な製造物なのだが、国家が主体となれば、コストもリスクも軍事力のメリットから見れば関係ないということになる。
 そこで、大統領や首相は”隠し顔“を持って原発建設や推進を唱えるのだが、次の大統領や首相に顔が変わっても、命令を受け実行する立場の官僚達やそれに癒着する企業家の顔は依然として変わらない。それゆえ、官僚達に秘密主義的な”隠し“が常套的に、あるいは伝統的な形で正当化されてゆく。彼らは常に仮面舞踏会に組織的な一員として参加し、教育されているのである。
 ところが、日本のような敗戦国で米国菅理下にある状況の中で政治的には戦争放棄、経済的には資本主義という特殊な国では産業用として原子力の平和利用を唱えて原発を開発することになる。


日本には地震マニア、預言者はいるが地震学者は全くいない

 戦後、いち早く原発を国家政策として建設させた中曽根元議員は日本を不沈空母として原子力空母や原子力潜水艦に実用炉として使われている原子炉をさらに大型化した原子炉、マークTを米国から導入した。そして、電力会社に国家的支援と全てのコストは電気料金に上乗せするという形で実用炉から商業炉に切り替えて日本各地に建設させたのである。
 すなわち、原発は電力会社が商業的に運営しているように見せて実は、隠れた国策会社なのである。税金で運営する代わりに電気料金で運営しているのである。しかも、電力事業を独占させ、常に利益を上乗せた電気料金に設定させて営利的な国策会社としているのである。
 それゆえ、原発に反対する者は戦前の軍閥に反対する様な扱いで国家的に抹殺され、政・官・財・学・マスコミの複合体である原子力村の発表は戦前の大本営発表の如しなのである。
 そこで、国民受けの為に戦前の軍閥や大本営発表を批判するジャーナリストや学者達は体制変わればコロッと顔を変えて原子力村の”隠れた顔“に切り替えるのである。今度こそ国民はこの事実を見逃してはいけないのだ。
 しかし、ここに大地震が起きて戦前の軍閥が軍事戦争で次々と敗れ、最後のとどめが広島・長崎の原爆であった様に、この10〜20年間、日本は経済戦争に次々と負け始め、とどめの一発が福島の原発事故となって原発の安全神話が崩れると共に、国民も目が覚めたはずである。
 今こそ戦前の軍閥と同じ様な原子力村の支配体制から日本国民は抜け出し、戦前の大本営発表と同じ様な原子力村の発表から真実を見い出す時である。それには、悪いことをした奴が先ずすることは『データを隠す』という単純な見方で、政府や企業、学者の言い分を分別して見極める事が大事である。
 そこで、福島原発事故に関して順を追っていけば最初に三陸沖大地震があり、その結果大津波が起きた。これによって何万人という多数の死者が出たのであるから、これは悪い事になる。
 ではこの悪い事をした奴はと問えば誰しもが大自然と答えるだろう。
 もちろん、大自然は「データを隠す」ということはしないし、むしろ隠れているほうである。その隠れていた断層のゆがみが表に出てきてしまっただけになる。となると、その断層のゆがみを地質学者や気象学者、あるいは地球物理学の学者だったら前からその断層のゆがみのデータや大地震の兆候前と思われるデータくらい掴めていてもいいだろう。
 ところが、彼等はそのデータを隠すというより、データさえ科学的に作り得なかったというのが実状なのだ。となると、日本には地震マニアや預言者なる者はたくさんいても地震学者なる者は全くいないということになる。


東日本大震災の前に日本にはすでに大地震の予告・警告があった

 ところが、私はアルメニア国立科学アカデミーの会員であるが、アルメニア国立アカデミー付属の地震学研究所では東日本大地震が起きる50日前にすでに科学的なデータをもとにして大地震の予知がされ、日本に警告していたというのである。日本の学者や官僚はひがみ根性でこんな小さな国に何が予知できるのかと無視してしまったのであろう。
 ところで、私は16年前にこの地震研究所を訪れたが、かなり精度の高い地震予知ができる優れた地震研究所であると感じた。地震予知だけでなく、耐震技術もその当時の日本より進んでいたと言えるくらいである。
 と言うのも、アルメニア共和国は大アララット山や小アララット山という大火山をかかえた国で1988年12月7日にマグニチュード6・8の地震が起き、2万5000人を超す死者を出していたのである。
 しかしながら、国内にある原子力発電所は運転中であったにもかかわらず、幸い被害はなく、その後も正常な運転を続けていた。しかしながら、1986年のチェルノブイリ事故の影響で国民に反原発の意識が強く芽生えており、このアルメニア地震を境に翌年の1989年に原発の運転を停止した。このアルメニア地震災害以降、アルメニア国立科学アカデミーは地震予知や耐震技術に力を入れ日本が驚くような地震学の進歩を成し遂げた。
 つまり、地震は止めることもできるし、起こすこともできる。これはアカデミーでは常識で、アカデミーの下の大学ではこの知識は知らされていないのだろうし、また、知らないのである。
 と言うのも、アカデミーは文科省の下にある大学とは違い国王や大統領と直結していて、エリートのエリートだけがメンバーとして選ばれ国の政策やプロジェクトに時にして大きな影響を与える機関だからである。米国では大統領直轄の軍事アカデミーに当たるものがペンタゴンと言えば分かりやすいだろう。  と言うのも、米国のルーズベルト大統領は1942年に原爆製造のためのマンハッタン計画を打ち立てた。この時にまさに錚々たる科学者や学者を集め、企業としては福島原発の原子炉を設計したGE(ゼネラル・エレクトリック)なども参加していたように単なる国防省という官僚組織でしかなく、政・官・財・学の複合組織と思った方が理解しやすい。

(次号へ続く)

五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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