芝居見物は江戸庶民が熱狂した一大イベント！


金持ちも貧乏人も芝居が大好き！
江戸時代の庶民の娯楽は現代のように多種多様ではなく、芝居見物は想像以上に大きな楽しみだったようだ。
芝居の興行は、明け六つ（午前６時頃）から、暮れ七つ半（午後５時頃）までが原則だったため、芝居見物に行く日は一日がかりだったという。
当時、芝居の演目は年に４、５回変わり、役者は各座ごとに決まっていた。そして年に１度10月に入れ替わるため、11月は芝居の世界では顔見世の特別の月だった。そのため、芝居小屋のある芝居町では11月が正月に当たり、前日には劇場や役者の家は飾り物や提灯を吊るし、初日の朝は雑煮餅で祝った。また、観客たちは待ちきれず夜中に起き出して支度をし各座の木戸前に深夜から詰めかけ一番太鼓を待つという１日がかりで熱狂する一大イベントだったのだ。
現代の歌舞伎見物は、劇場の窓口や電話・インターネット等で気軽にチケットを購入できるようになっているが、しかし、江戸時代は当日木戸銭を払って大衆席を利用するか、芝居茶屋を通じて桟敷席などを予約しなければならなかった。



芝居茶屋での観劇はステイタス!?
芝居茶屋は劇場の周りの前後左右に数十件ほどあったという。この座付きの専門業者を通して入るのは上級のお客で桟敷や升席での観劇となり、一般のお客は木戸から入り土間の大衆席で観るのが普通だった。
芝居茶屋では、早朝船でくるお客の出迎えや３度の食事の世話、劇場への送り迎え、また、当時は２時間くらいの幕間も普通だったようで、その休憩やトイレの利用など観劇にまつわる全てのサービスを受け持っていたと言われている。
この芝居茶屋を利用しての観劇は、お客にとって一種のステイタスでもあったようで、芝居茶屋で何度も衣装を替えお色直しを楽しんだ若い娘もいた程だという。
このように当時の芝居見物は観劇を中心とした豪華な遊びであり、その観客に至れり尽くせりのサービスを提供するのが芝居茶屋の役割だったようだ。